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今さら聞けない、電子契約とは?書面契約との違いやメリット・デメリットを分かりやすく解説します

「そもそも電子契約ってなに?」
「電子契約も紙の契約書と同等の証拠能力があるの?」

電子契約について、名前は知っていても内容がわからない、法的な有効性について、など疑問を抱えている方も多いと思います。

本記事では、電子契約の定義や注意点、メリット・デメリットについて、書面契約と比較しながら解説していきます。電子契約の導入を検討するにあたって、前提となる基礎知識を身につけられる内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

本記事のポイント
・電子契約の主な特徴はタイムスタンプと電子証明書
・電子契約は書面契約と同様の証拠力、本人性が担保される
・電子契約導入おけるメリット・デメリット

そもそも電子契約とは

電子契約は、インターネット上で契約書の作成・送信・締結を完結できるサービスです。電子署名及び認証業務に関する法律で認められており、書面契約と同等の効力を持っています。

紙を使用しないため、いつでもどこでも契約ができ、電子署名やタイムスタンプで契約書の改ざんや偽造を防ぐことができます。

電子契約に関する法律

電子署名法が2001年4月1日から施行され、電子署名がサインや印鑑の代わりに適用される法律が整備されました。
これにより本人による一定の要件を満たす電子署名を行った電子文書等は本人の意思に基づいて作成されたものと推定されます。(電子署名法第二条、第三条)

参照:電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)及び関係法令

電子署名法により各電子契約サービスの有効性が担保されているため、利用者は安心して電子契約サービスを利用することができます。
電子帳簿保存法も電子契約に関する重要な法律の一つです。

電子契約の契約書も紙の契約書と同様、税法の要件を満たした保存が必要です。
保管方法によっては、電子署名法や民法上有効でも、電子帳簿保存法の要件を満たしておらず税務上のリスクが発生することがあるため注意が必要です。

2021年9月に施行されたデジタル改革関連法により、多くの書類の押印義務の廃止、書面交付義務の緩和が行われています。宅建業法改正が2022年5月18日にデジタル改革関連法の一貫として施行されました。宅建業法改正により重要事項説明書などの押印が廃止され、 重要事項説明書や、宅地・建物の売買・交換・賃貸契約締結時の交付書面など各種書類の電磁的方法による交付が可能となりました。

その他の関係する法律としては、

  • 電子契約を支える法律(民法、民事訴訟法)
  • 書面の電子管理に関する法律(IT書面一括法、e-文書法)
  • 税務に関する法律(印紙税法)
  • 利用者を保護する法律(電子消費者契約法、特定商取引法、借地借家法、宅建業法)

などがあります。

電子契約の特徴

電子契約の特徴として、その文書に関わった人や時間がデータとして残るようになっています。
電子署名も本人のものと証明するための仕組みが備えられており、改ざんや偽造などの不正が起こりにくい仕組みとなっています。

タイムスタンプで時刻を刻印する

タイムスタンプとは、そのタイミングでその電子データが存在していたこと(存在証明)、それ以降改ざんや編集、削除が行われていないこと(非改ざん証明)の2点を証明するための技術です。

タイムスタンプは基本的にTSA(時刻認証局)という機関が発行します。

①契約書からハッシュ値を生成してTSAに送付、タイムスタンプの付与要求を行う
②TSAがハッシュ値とその他情報からタイムスタンプを生成
③タイムスタンプのハッシュ値と①で生成したハッシュ値とを比較して改ざんされていないか検証

という手順で存在証明が可能となります。

少し複雑ですが、電子契約システムにはタイムスタンプ機能が付随していることがほとんどなので利用者は意識せずにタイムスタンプの利用が可能です。

電子証明書で証明する

電子証明書とは第三者が本人であることを電子的に証明するものです。身近なものだとマイナンバーカードにも利用されている技術です。

電子契約では紙面契約時の押印の代わりに電子署名を行い、契約を締結します。このとき使用した電子署名が本人のものであることを証明するのが電子証明書です。

インターネット上のものに直接サインや印鑑が押せないので、電子署名がサインや印鑑の代わりになるように、電子証明書は印鑑証明書の代わりになります。

電子契約と書面契約の違い

電子契約と書面契約の最もわかりやすい違いは、紙かデータという点です。それ以外の違いについては、下記のようになります。

書面契約電子契約
形式電子データ
押印印鑑電子署名
本人性の担保印鑑証明書電子証明書
改ざん防止契印・割印タイムスタンプ
送付方法郵送・持参インターネット通信
保管方法書棚サーバー
収入印紙必要不要

既存の紙媒体であれば、書面を作成しサインや印鑑、契印、割印などでその書面の契約が担保されていましたが、電子契約では電子署名、タイムスタンプでその契約が担保されています。本人性の担保として印鑑証明書の代わりに電子証明書が利用されます。

また、現在の印紙税法では電子契約の締結は課税文書の作成にはあたらないということで、印紙税の課税はされないことになっています。

契約形式の違い

紙と電子の契約の違いは、書面として残すかデータを残すかという違いがあります。

証拠力の担保は紙の印鑑などの代わりに電子署名で行います。改ざんの防止として書面契約では契印などを使用しますが、電子契約ではタイムスタンプを付与することで非改ざん証明を行います

印鑑証明の代わりに電子証明書を使うことで本人性の担保を行います。
このように電子契約は書面契約と同様の証拠力、本人性が担保されるため効力は変わりません。

保管方法の違い

書面契約であれば、作成した契約書を保管する必要があります。

個人で行う契約だけならファイリングして残しておくだけでいいかもしれませんが、ビジネスともなると契約数も膨大になり、書棚の管理も必要です。
電子契約では、電子データをサーバーに保管することが可能なので保管スペースや管理コストを抑えることが可能です。使用する電子契約システムにもよりますが分類や検索などができることが多いため利便性も向上します。

電子契約の証明方法には2種類ある

電子契約では、本人が作成したことを証拠として残す必要があり、この本人性を担保する方法の違いにより、2種類の証明方法があります。
それが電子署名(立会人型)と電子署名(当事者型)です。

電子署名(立会人型)

電子署名(立会人型)は契約者でない第三者が契約の当事者の指示で電子署名を付与するタイプの電子署名です。

第三者というのは全く関係のない第三者ではなく電子契約サービスの事業者です。そのため立会人型は事業者署名型と呼ばれることも多いです。

A社とB社が電子契約サービス(C社)で契約を行うときC社によって電子署名が行われます。

A社とB社は電子契約サービスに本人登録を行い、ログイン認証やメール認証を利用して契約を締結するため本人であることが担保されます。

煩わしい手続きなどもないため、比較的導入しやすい署名方法になります。

電子署名(当事者型)

電子署名(当事者型)の場合、署名者本人の電子証明書を利用して本人であることを担保します。契約を行うA社、B社それぞれがICカードや電子ファイルで契約書に署名を行います。

電子証明書は第三者機関が発行するため、電子署名法に基づいた法的効力の高い本人認証が可能です。

ただし、電子証明書の発行を行うなど事前の準備が必要です。マイナンバーカードを例にあげると、地方自治体へ発行を依頼し、ICカードリーダーを購入する必要があります。

電子署名(当事者型)はICカードや電子ファイルを他人に渡していない限りは本人性が高く担保されますが、準備や手続きが煩雑となります。

両方利用できるハイブリッド署名

上記のように、電子署名(立会人型)と電子署名(当事者型)は利便性と信用性が一長一短となっています。
電子署名(立会人型)か電子署名(当事者型)を、個人や法人相手、金額の多寡など契約の用途に応じて適したタイプを選ぶことができるのがハイブリッド署名です。ハイブリッド型電子契約と呼ばれることもあります。

電子契約のメリットは業務効率化やコスト削減

契約締結までの時間短縮、リモートワークでの対応が可能になるなど、業務効率化や改善、
印紙税の削減などによる金銭的なメリットがあります。

業務効率化

書面契約の場合、契約書を印刷、製本し封筒に入れ投函するなどの事務的作業が存在します。

この他にも取引先から契約書に押印を押してもらい、印紙を貼って送り返すなど時間的にも労力的にもコストがかかります。

電子契約でのやりとりはインターネット上で行われるため、データをアップロードするだけで済み、ミスがあった場合の訂正も容易です。事務作業を行っていたスタッフの労働を他の仕事に割り振ることができ、印刷代や郵送代などの事務経費も削減できます

契約書の整理に関しても電子契約書であれば、分類や検索が容易になります。保管場所も電子データのため不要です。

コスト削減

紙の契約書は法律により収入印紙を貼ることが義務付けられています。

契約の種類や金額によって印紙税の金額は変わりますが、最低でも1件200円、契約金が大きいものであれば数万、数十万円になります。

万が一収入印紙を貼り忘れた場合、納付を怠ったとして納付すべき額の3倍を徴収されるリスクもあります。

ですが、電子契約の場合、法律で言う「課税物件に掲げる文書」に当たらないため、印紙税自体が不要になります。

国会答弁でも電子契約は印紙税が非課税であることが公表されています。

電子契約でコスト削減とリスク回避の両方が可能となります。

コンプライアンス強化

電子契約では、契約するまでに関わった人物や過程をシステムログとして記録できます。

タイムスタンプで契約締結日を過去の日付に変えるなどの不正、偽造、改ざんを防止できます。電子署名を用いることで本人認証が可能です。

書面契約では難しかった細かい閲覧制限も、閲覧権限管理機能がついたサービスを使うことによって実施が可能です。

契約の可視化

書面契約では、押印や送付など双方のやり取りがあり、リードタイムが存在します。返送までに時間がかかってしまったり、紛失してしまったりと契約が多ければ作業の遅延や漏れなども起こります。

電子契約では内容の確認も双方で可能で、データをいつ送信して、いつ署名したかなどの進捗管理が可能です。


利用する電子契約システムにもよりますが、類似契約書をパターン化して効率化したりと、人的コストの削減にも繋がります。

電子契約のデメリット・注意点

電子契約のメリットを説明してきましたが、もちろんデメリットも存在します。電子契約でできない契約があったり、社内調整が難しかったり。取引先の対応によっては、電子契約ができない場合もあります。

対応できない契約がある

法整備が進み、電子契約書でも法的効力が認められていますが、法律に基づき紙面での交付を義務付けられている契約があります。

電子契約ができない契約書の例

  • 事業用定期借地契約(借地借家法第二十三条)
  • 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約(企業担保法第三条)
  • 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律第三条)

これらの契約書は公正証書での契約締結が義務付けられているので書面で契約を行う必要があります。

今後、公正証書の電子化が進めばこれらの契約も電子契約が可能になると考えられます。

現状認められていない電子契約も、今後の法改正などによって変化していく可能性がありますので、最新の情報を確認するようにしましょう。

取引先の合意が必須

自社で電子契約のシステムを導入したとしても、取引先がコストや導入環境から電子契約を導入していない、電子契約に同意しない場合には利用できないため注意が必要です。

多くの電子契約サービスでは、取引先のコストは不要なことも多いためコスト面以外での問題となることが多いです。

もし取引先が電子契約に合意しない場合、自社では契約書を電子契約で送信し、取引先の同意により電子契約を締結、取引先には書面契約を行い契約書を一通保管してもらう、などの形で調整することも視野にいれる必要があります。

導入時に業務フローを変更する必要がある

自社内で電子契約を導入する際、人的コストが削減できるメリットはお伝えしましたが、契約方法が変わるため、社内全体で業務フローを調整する必要があります。

閲覧権限や承認権限など重要な部分については社内規定で定めておいた方が良いでしょう。電子データの管理や保存方法を整理しておかなければ、必要な契約を見つけられないことも考えられます。電子帳簿保存法の保存要件を満たしているかなどの確認も必要です。

導入後の運用も継続して改善していかなければなりません。

まとめ

電子契約は法律により有効性が担保されており、タイムスタンプや電子署名によって、証拠力や本人性が担保されています。

法整備が進むにつれ電子契約が可能な書類も増えています。

書面契約から電子契約に変えることで、業務の効率化、コスト削減、コンプライアンス強化などさまざまなメリットがあります

ただし、導入や運用については社内外含め、調整が必要となるのも事実です。

メリットとデメリットを比較し、できる範囲で電子契約を実施すると良いでしょう。