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電子契約のやり方と注意するべきことを解説します
ビジネスでは契約を行うことが多く、その度に紙の書類に印鑑を押印したり、書類を保管するといったことを行ってきました。
在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)の増加に伴い、紙を必要としない電子契約にも注目が集まっています。
電子契約を導入することで、契約当事者間での物理的な文書のやり取りが不要になるといったメリットがあり、さらには取引をより迅速かつ確実に行うことができます。
一方で、電子契約を初めて導入する場合には分からない点も多いはずです。
そこで本記事では、電子契約に関する基礎知識から応用までを分かりやすく解説していきます。
INDEX
電子契約とは?
電子契約とは、紙の書類を使わずにインターネットを通じて契約を締結するシステムのことです。
物理的な文書のやり取りを行う必要がなくなり、時間やコストを大幅に削減できることが大きなメリットと言えます。
具体的には、契約書の作成、署名、送付、保管といった一連の流れをオンライン上で完結させることができます。また、電子記録として保存できるため改ざん防止にもなります。
電子契約システムの導入率は70%以上
ペーパーロジック株式会社の調査によると、東京都内の企業の電子契約システムの導入率は73.2%(2023年)に達しています。2022年と比較すると3ポイント増加しています。
電子契約は、コストの削減や業務効率化への貢献、新型コロナウィルス感染症による感染対策や在宅勤務対応が可能になる等の要因により普及が進みました。
また、2024年1月から「電子帳簿保存法」の改正が施行され、決められた保存方法にもとづいて、データのまま保存しなければなりません。
これにより、取引先と電子データでやりとりした書類の書面保存が禁止されており、電子契約以外にも各書類の電子化が進むことが予想されます。
参照:電子契約、2023年「導入済み」の企業は73.2%、昨対比3ポイント増
参照:ペーパーロジック株式会社
参照:電子帳簿保存法が改正 国税庁
電子契約書の作成は契約によって異なる
電子契約書の作成は、契約内容によって異なります。
企業活動でよく行われる契約には下記のようなものがあります。
- 売買契約書
- 請負契約書
- 委任契約書
- 雇用契約書
- 賃貸借契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
それぞれの契約ごとに内容が変わりますが、電子契約書では各企業の契約方法や書式に合わせてカスタマイズが可能です。
一方で、電子契約ができない契約もあることを覚えておきましょう。
下記の契約は公正証書での契約締結が義務付けられているので書面で契約を行う必要があります。
- 事業用定期借地契約(借地借家法第二十三条)
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約(企業担保法第三条)
- 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律第三条)
現在は、電子契約が認められていない電子契約も、今後、公正証書の電子化が進めばこれらの契約も電子契約が可能になると考えられるため、最新の情報を確認するようにしましょう。
電子契約導入の流れ
電子契約を導入する際の流れをポイントごとに解説します。
電子契約システムの普及により、簡単に利用できるようになった電子契約ですが、導入するには様々な準備が必要です。
システムの選定前、選定時、導入後に必要な準備を解説していますので、ぜひ参考にしてください。
現状把握する
電子契約を効果的に利用するためには、自社の仕事のスタイルに適しているか、導入後に運用の継続と改善が可能か、などの現状を確認する必要があります。
どの契約書を電子契約に移行するべきか、業務で行う契約は電子契約が可能かを検討します。扱っている契約書の種類によっては電子契約が行えない場合があるので注意が必要です。
また、自社の業務フローを把握しておくと、電子契約システムの選定時に必要な機能を備えているかを確認することができます。
目標設計・導入範囲を決める
現状把握に基づき、目標設計を行い、電子契約の導入範囲を決定します。自社の課題に応じて、コスト削減の目標や業務効率化の目標などを設定していきます。
予算と期間の制約、契約業務の複雑さによっては、まずは一部の契約に絞って電子化を行う検討もありえます。
導入後の業務フローを検討する
さらに、導入後の業務フローを検討し、どのような効率化が実現できるのか、どのような機能が必要なのかを考えます。
社内業務であれば、一例として承認プロセスの整理があげられます。契約書のリーガルチェック経路や承認経路や各社員の権限の整理が必要です。文書管理規程がある場合は、規定の変更も要検討です。
また、取引先の拒否で電子契約が進まないこともあるため、外部との連携が必要なフローがある場合は事前のヒアリングも必要に応じて行います。
電子契約システムを選定する
先ほどまで検討を行った情報をもとに、電子契約システムの選定を行います。
選定した電子契約システムが、自社の契約の数に応じた料金体系となっているか、必要な機能が備わっているかを検討する必要があります。
特に、承認ワークフローや権限管理の機能は必要となることが多いため導入前の確認をおすすめします。権限管理機能が備わっていないと、社内の承認プロセスに不備が生じて、「上長が知らない間に契約が締結されていた」といったことが発生する可能性があります。
このように、電子契約システムを選ぶ際には、自社の状況に合わせることが重要です。
システムと業務の要件定義
電子契約システムの選定が終わったら、具体的な業務要件とシステム要件を定義します。
まず、現在の契約に関する業務フローを洗い出し、整理します。業務が整理できたら、要件定義を行います。
要件定義には機能要件の定義と非機能要件の定義があります。契約書作成・管理・保管など、自社の業務に必要な機能を持っているかの機能要件の定義。セキュリティやサポート体制などの非機能要件の定義。両方の要件定義を行いましょう。
機能要件に関しては機能の有無だけではなく、自社の業務に合っているか、業務担当者が使いやすいかなども確認しておくと、導入後のトラブルを避けられます。
電子契約システムを導入する
自社に最適なシステムが選定できたら導入を行います。電子契約システムの利用申込やアカウント設定などをして、実際に運用の設定を行っていきます。
署名や印鑑の登録、さらにはユーザーごとの権限設定を行います。権限設定では、部署などのグループ設定や、管理権限や署名権限など各種権限の割り当てを実施します。
電子契約サービスによっては、導入支援サービスがあり、費用はかかりますが、権限設定などの初期設定や運用ルール策定の支援を行ってくれます。
業務フローを変える・社内研修を行う
電子契約システムを導入できたら。実際に新しい業務フローで契約業務を行っていきます。
電子契約のメリットを享受するには、システムを導入するだけでなく、新しい業務フローで従業員が電子契約を活用できるかが大切です。
導入時には契約書の作成方法や承認方法などに関しては事前にマニュアルを準備して研修とともに配布を行いましょう。配布に合わせて社内研修を行うと、スムーズに電子契約システムへの移行ができます。
取引先へ通知する
電子契約の導入に際して、取引先への通知を行います。電子契約には双方の合意が必要なため、取引先の協力が得られなければ電子契約が利用できないため重要なステップです。
通知では取引先に電子契約システムの利用案内や必要な対応・準備についての情報を伝えます。この際、電子契約の効率化やセキュリティ強化など、取引先にとっての利点を明確に説明し導入に前向きになってもらうことが重要です。
また、電子契約のプロセスや、システムのアクセス方法や操作方法なども取引先に正確に伝えておくことでスムーズに電子契約へ移行できます。
電子契約のやり方
電子契約サービスを導入後、実際に電子契約を利用していきます。
電子契約の手順としては、契約書に署名を行い受信者(主に取引先)に送信、受信者が契約書を受信して内容を確認し承認の署名を行うというものです。
ここでは、電子契約の締結方法について解説します。
契約書をアップロード・送信する
電子契約サービスを利用すると、契約書や関連ドキュメントは指定されたファイル形式(主にPDF)でアップロードを行います。
契約書をアップロードした後に、承認経路の設定や電子署名の設定を行い取引先へ送信します。
契約書の受信・承認する
契約書は電子契約サービスを介して送信されるため、受信者はメールにて通知を受け取った後に電子契約サービスにアクセスします。サービスによっては受信時に、アカウントを作成せずメール認証のみで契約書にアクセスすることが可能です。
受信者は契約内容を十分に確認および検討し、電子署名を行って承認します。
電子契約システムを選ぶポイント
電子契約システムは何を基準に選ぶべきでしょうか。
使いやすさや質の高いサポートは、円滑な運用につながります。コスト面での意識も必要ですが、初期費用は基本の月額料金だけではなく、運用にかかるコストも総合的な判断が必要です。
セキュリティは企業の社会的信用に関わるため、必要な暗号化や認証機能が備わっているかを確認しましょう。
ここでは、電子契約システム選定に必要なポイントを5つ解説していきます。
必要な機能が備わっているか
必要な機能が備わっているかは非常に重要です。必要な機能がなければ電子契約サービスを導入しても、自社の業務に組み込むことができず導入した意味がなくなってしまうからです。
気をつけるポイントとしては、電子署名の立会人型・当事者型の対応やタイムスタンプなど電子契約の効力を担保する機能です。
また、多人数の組織では権限管理やワークフローなどの権限管理が必要となるため、これらの機能があるかの確認も必要です。
利用方法は業務に適しているか
多くの企業が、電子契約を導入する理由として「効率化」を目的としています。しかし、日常の業務にシステムが適していないと業務の効率化が行えません。
自社の契約の種類や複雑さを把握して適切なものを選ぶ必要があります。多機能だが自社の社員のリテラシーが追いつかないなどの可能性もあります。自社の状況に適したサービスを選びましょう。
料金は適正か
電子契約の導入は、長期的に見ると人件費などを考慮しても、費用対効果がかなり高いと言われています。しかし、高額なシステムを導入すればいいというものでもありません。
高額なものは多くの機能が揃っていますが、自社で使用しない機能であれば不要なため無駄な出費を抑えるためにも適切なサービスを選ぶ必要があります。
また、サービスによって価格体系が異なるため、適正価格かどうかを見極めることが必要です。契約数が多い企業であれば、送信料金が無制限のサービスを選ぶことをおすすめします。
必要なセキュリティ性能を有しているか
電子契約にはセキュリティリスクがあるため必要な性能を有しているか確認する必要があります。
具体的には、情報漏洩のリスクに対応するための、データ暗号化やアクセス制御。改ざんリスクに対応するための、タイムスタンプや電子署名です。
電子契約サービスを選定する際には、これらのセキュリティ性能が充実しているか確認し信頼できるプラットフォームを利用することが重要です。
サポート体制は十分か
導入には、十分なサポート体制が整っているかを確認することも重要です。
シンプルに電子契約を行うだけであれば手厚いサポートは不要です。しかし、複雑な業務フローや権限管理が発生する場合にはサポート体制が必要です。
問い合わせに対するレスポンス時間、サポートが電話対応可能かなどを確認しましょう。
手厚いサポートが必要な場合は、運用体制の確認や業務での活用支援まで導入支援サービスを依頼するのも一つの手です。
また、実際のユーザーのレビューや評価も参考になります。自社にあったサポート体制を提供する電子契約サービスを選ぶことで、導入後も安心して利用を続けることができます。
電子契約を導入する際の注意点
電子契約の導入はメリットが多いですが、一方で注意すべき点もあります。ここでは3つの注意点について解説します。
業務フローの変更が必要になる
電子契約の導入時には、業務フローの見直しと調整が必要です。
例えば、各部署から法務部門へリーガルチェックを依頼する際の承認フローがあった場合は既存の業務を見直し、電子契約の手続きに合わせて調整することが求められます。
業務フローの変更に合わせて関連する規定類の改正も検討する必要があるため、組織全体での準備が重要です。
取引先の理解・導入が必要になる
電子契約は、紙の契約書を使った従来の方法に比べて、多数のメリットがあるものの、導入には双方の合意が必要です。
取引先にも電子契約のメリットを理解してもらい、使用の合意を得る必要があります。場合によっては、先方の業務フローを変えることになるため、慎重に対応すべきポイントです。
取引先が電子契約の導入に消極的な場合は、メリットと操作方法を丁寧に説明し、信頼関係を築きながら導入を進めていきましょう。
電子化できない書類もあることを理解する
電子契約の導入によって、全ての書類が電子化できるわけではありません。
特に、法的要件によって紙の書類でのみ有効とされているものが存在し、公正証書が必要になる特定の文書は、現在も紙ベースでなければならない場合があります。
これらの例外を理解し、電子契約を運用する上で、どの契約書を電子化できるのかを把握することが重要です。
まとめ
電子契約システムの導入により、契約書の物理的な文書のやり取りを行う必要がなくなり、時間やコストを大幅に削減できます。
本記事では電子契約サービスの導入の流れについて解説しました。電子契約サービスの導入の流れについてまとめると以下のようになります。
- 目標設計・導入範囲を決め、導入後の業務フローを検討し、自社にあった機能を考える
- 電子契約システムを選定し自社の業務に合うように要件定義を行う
- 導入後に社内体制を整えた後、取引先へ通知する
また、注意点として取引先の合意が得られない場合や、自社で扱う契約書が電子契約に対応していない場合は、電子契約が導入できないことについて解説しました。
実際に導入を検討される際は本記事の解説を参考にして電子契約の導入を検討してください。